この記事では、救急現場で行われる活動の1つ
「プレアライバルコール」について解説しています。
なお、状況評価の活動の1つとして当サイトでは記載しています。
救急車に乗り始めたばかりの新人救急隊員はもちろん、現役隊員の復習や新人教育で利用できるように、可能な限り救急現場に即して必要十分な情報で纏めました。
この記事を読むことで、
プレアライバルコールの目的・重要性・活用方法が理解でき、自信を持って出動途上に有効なプレアライバルコールができるようになります。
救急活動の全体の流れ、他の活動については
↓記事から確認してください。
\まとめ記事/
\詳細記事/
- 救急隊(救急救命士)を10年以上
- 現役で活動中|隊長・隊員・機関員経験
- エビデンス|以下参考資料
- 救急標準テキスト
- 救急救命士標準テキスト
- 必要に応じて各公式サイト参考
当サイトは、消防吏員(救急隊員など)向けに運営・執筆しています。
他の医療従事者(医師・看護師など)が病院内で行う行為と一部記述に差異(簡略化など)がある箇所がありますのでご了承ください。
※活動する環境(人数含む)・資格による行える処置・使用できる資機材等のため
それでは、本題に入ります。
共に学びましょう!
前提:プレアライバルコール(prearrival call)とは
救急隊が現場でスムーズに活動を行い、
傷病者を病院に搬送するまでの時間を短縮することを目的とし
救急車が現場に到着するまでの間に情報収集を行うことです。
1.プレアライバルコールの重要性
日本の人口が減少しているにも関わらず
高齢化や救急車の不適切な利用(軽症事例)などの影響で、救急車の出動件数は年々増加傾向にあります。
さらに出動件数の増加にともない、現場到着時間と傷病者の病院収容時間は遅くなっている。
このままだと、救急車本来の使命を果たせなくなるかもしれません。
参考
総務省消防庁の統計(令和2年の速報値)によると
救急出動件数は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う衛生意識の向上や
不要不急の外出自粛といった国民の行動変容により減少しているが
一方で、新型コロナウイルス感染症への対応や、発熱傷病者の病院側の受け入れ困難により
現場到着所要時間や病院収容所要時間は延伸している
救急車の適正利用を広報し、市区町村民の協力(意識改善)を促し
不必要な救急出動を減らすことはとても大事ですが、
私たち救急隊も、生命の危機にある傷病者に、必要な救急医療が提供できるよう
1件にかかる救急出動の時間(出動~引き揚げ)を短縮する努力が必要です。
その一つの試みがプレアライバルコールです。
2.プレアライバルコールで聴取する内容
事案毎に聴取する内容が変わるため、
各隊で判断する必要がありますが、例としていくつか挙げてみます。
例)
- 現場活動に関する項目:緊急度の判断・主訴・現病歴・人定
- 応援要請に関する項目:傷病者の人数・危険物の有無
- 病院選定に関する項目:既往歴・掛かりつけ病院・ADLなど
- 搬送開始に関する項目:保険証・お薬手帳・診察券準備
※筆者の医療圏では、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種回数と関係者を含め風邪症状の有無を病院交渉時にほぼ聞かれるため、現場到着時間に余裕があればプレアライバルコールで確認しています。
3.プレアライバルコールのメリット・デメリット
プレアライバルコールのメリット・デメリットの概要は以下の通りです。
それぞれ、解説します。
プレアライバルコールのメリット
現場滞在時間の短縮
プレアライバルコールをすることで
緊急度判断(意識・呼吸など)や主訴・現病歴から
現場の活動方針を事前に隊員間で周知することで
各隊員が迅速に活動することが可能になります。
また、傷病者情報(人定や既往歴)などを事前に聴取することや
保険証・お薬手帳・(診察券)を事前に準備してもらうことで
現場滞在時間を短縮できます。
傷病者の早期状態把握(病態推理)
指令員の情報(指令内容)は、出動を遅らせないため短時間に必要最低限の聴取になることが多くなります。
緊急度の判断となる、意識(会話が可能か・呼びかけに反応するか)や呼吸(普段通りの呼吸か)、循環(顔色やチアノーゼ)などを中心に、主訴や現病歴・既往歴などを詳しく聴取することで病態の推測が可能です。
病態の推測は、最悪の状況(緊急度高・重症度高)から想定し
可能性のある数パターンを考慮しておきましょう。
アンダートリアージで活動してしまった場合、その後の活動が後手になってしまいます
逆にオーバートリアージで活動すれば、慌てずに対応することが可能です。
リアルタイムの容態を把握することが出来る
119番通報から救急隊が傷病者に接触するまでには、全国平均で約9分程度掛かっており、
その間の容態変化に対する情報収集ができます。
病態によっては、刻一刻と容態が変化(悪化や回復)することもあり、
それらを関係者などから聴取することで、リアルタイムに容態を把握することが可能です。
口頭指導が出来る
傷病者の状態を聴取し、必要に応じて口頭指導ができます。
例えば
- CPA(心肺停止) ⇒ CPR(心肺蘇生法)
- 出血 ⇒ 止血
- 呼吸苦 ⇒ 座位補助 など
口頭指導することで、傷病者の救命・悪化防止・苦痛の軽減を目的とした応急手当を
救急隊が接触する前に行うことが可能です。
傷病者や関係者が安心する
119番通報した後、救急車が到着するまでの数分間というのは
傷病者や関係者にとっては、とても長く感じます。
その間に電話であっても、救急隊員と会話することで
落ち着かせたり、安心感を与えることができます。
プレアライバルコールのデメリット
認知されていない:電話に出てもらえないことがある
プレアライバルコール自体のデメリットではないですが
プレアライバルコールをする場合、
救急車の積載携帯電話を使用します。
通報者目線で考えると、
119番通報した後、知らない番号から掛かってきますので
「今それどころではない」「知らない番号からの番号はそもそも電話に出ない」という理由で
電話に出てもらえないことがあります。
そのため制度自体が周知されないと、そもそも運用が破綻してしまいます。
傷病者や関係者に負荷がかかる
救急車を呼ぶ必要がある状況下では
関係者や傷病者は、冷静な状態でない場合が多く、そのような状態で質問や手当の指示を受けるため
それなりの負荷がかかります。
またCPAの場合、通報者が1人かつ固定電話の場合に胸骨圧迫が中断されてしまいますし、
通報者が本人で、呼吸苦を訴えている場合、会話をすることで増悪することも考えられます。
そのため、全ての事案でプレアライバルコールをすれば良いというわけではなく、
指令内容などから、必要かどうかを判断する必要があります。
まとめ:プレアライバルコールを上手に活用しよう
今回は「プレアライバルコール」についてまとめてみました。
プレアライバルコールを実施することで、
以上のようなメリット・デメリットがあります。
各事案に合わせてプレアライバルコールが有効かどうかをしっかりと判断する必要があります。
プレアライバルコールを上手く活用し、現場活動に活かしていきたいですね(^^♪
以上
それでは明日も頑張りましょう!全ては傷病者のために(^^)/
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最後まで、読んで頂きありがとうございました。
参考資料:救急救命士標準テキスト、救急標準テキスト
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