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【救急活動】救急現場のバイタルサイン測定:呼吸(消防職員向け)【基本手技】

この記事では、救急現場で行われる活動の1つ
バイタル測定の「呼吸」について解説しています。

バイタルサインとは
生命(vital)の兆候(signs)と訳され、人間の生命活動における重要な指標。
呼吸・脈拍・血圧・体温を基本とするが、救急現場では、「意識」を加えて5項目をバイタルサインとする場合が多い。

救急車に乗り始めたばかりの新人救急隊員はもちろん、現役隊員の復習新人教育で利用できるように、可能な限り救急現場に即して必要十分な情報で纏めました。
また呼吸の評価は、一部の観察を除いて救急資格(救急標準課程や救急救命士)の必要がなく、PA連携で先着した消防隊員にも必須スキルです。

<想定読者>
  • 呼吸を測定すると何がわかるの?
  • 呼吸の重要性
  • 呼吸の正しい観察方法が知りたい
  • 正常値・異常値は?

上記のような悩みを抱える
全消防吏員

  • 救急隊員
  • 消防隊員
  • 救助隊員

この記事を読むことで、
基本手技である呼吸の重要性・観察方法やコツ・評価方法が理解でき、自信を持って現場で行えるようになります。

※救急活動の全体の流れ、他のバイタル測定については
↓記事から確認してください。

\まとめ記事/

\バイタル測定基本手技一覧/

この記事の信頼性
  • 救急隊(救急救命士)を10年以上
  • 現役で活動中|隊長・隊員・機関員経験
  • エビデンス|以下参考資料
    • 救急標準テキスト
    • 救急救命士標準テキスト
    • 必要に応じて各公式サイト参考

当サイトは、消防吏員(救急隊員など)向けに運営・執筆しています。
他の医療従事者(医師・看護師など)が病院内で行う行為と一部記述に差異(簡略化など)がある箇所がありますのでご了承ください。

※活動する環境(人数含む)・資格による行える処置・使用できる資機材等のため

それでは、本題に入ります。
共に学びましょう!

目次

まずは呼吸の正常・異常を確認

救急現場に限らず、正常を知らなければ異常はわかりません。
呼吸の正常・異常を確認しておきましょう。

ここで確認する項目は

  • 呼吸数
  • 呼吸の深さ(換気量)
  • 呼吸の性状・リズム
  • 呼吸の型
  • 呼吸音

呼吸数

スクロールできます
分類正常値
成人(15以上)12 ~ 20
小児(15未満)15 ~ 25
未就学児(6歳未満)20 ~ 30
乳児(1歳未満)30 ~ 40
新生児(28日未満)40 ~ 60

呼吸数の正常値は、年齢によって増減します。

特に小児以下の場合
恐怖や興奮時等精神的に不安定な状態や発熱時 頻呼吸がみられる。

また男女差や個体差があるのと、何秒で観察しているかで1分換算したときの倍数が異なり
呼吸数の正常値は参考資料で異なります。

参考までに、Googleの画像検索
「呼吸数 正常値」のリンクを載せておきます。

呼吸の深さ

呼吸の深さは、1回換気量として捉えることができます。
通常時成人の1回換気量は500mlで、胸部や腹部が軽く膨らみが見てわかる程度です。

呼吸の性状・リズム

正常な呼吸をしている場合、吸気と呼気の比率は概ね

吸気:呼気=1:1.5

さらに呼気→吸気へ替わるのに約1秒かかり、
一定のリズムで吸気と呼気を繰り返します。

呼吸の型

呼吸の型には胸式呼吸と腹式呼吸があり、
一般的に男性は腹式(胸腹式)呼吸、女性は胸式呼吸となります。

ただし、仰臥位などでは腹式呼吸に移行し、副交感神経が優位になり心身を休めます。
※腹式呼吸・胸式呼吸については後述

また、脊髄損傷の一部(C4~6)では胸式呼吸が出来なくなり、腹式呼吸のみになる。

呼吸音

呼吸音は、気管・気管支・肺胞呼吸音として聴取できます。

異常を来すと、

  • 呼吸音が聞こえなくなる
  • 副雑音として異音が聞こえる

などが起こります。

救急隊員以外も必要なスキル

バイタルサインの測定は救急事案では、
とても重要な手技です。

救急隊員だけが出来れば良さそうですが

  • PA連携(警防隊+救急隊出動)であれば、
    警防隊が先着し救急隊が後着する場合
  • 救助事案であれば、
    すぐに救急隊が接触できない場合

などは往々にしてあります。

そのため、警防隊員や救助隊員でも
バイタルサイン測定は、確実に出来るようにする必要があるスキルです。

前提:呼吸はO2とCO2のガス交換

生命活動の維持に必要なエネルギーを産生するため、空気中から酸素(O2)を取り入れ、細胞の代謝で生じた二酸化炭素(CO2)を排出するガス交換を呼吸といいます。

また、呼吸はガス交換の場所によって外呼吸と内呼吸に分かれます。

外呼吸・内呼吸 呼吸器の解剖 別記事作成予定

呼吸を観察する重要性

呼吸の観察では、

  • 呼吸の有無
  • 呼吸数
  • 呼吸の深さ(換気量)
  • 呼吸の性状・リズム
  • 呼吸の型
  • 呼吸音
  • 動脈血酸素飽和度

を確認し、傷病者の状態をある程度把握することができます。

健康成人の安静時は、呼吸数・深さ・リズムはほぼ規則正しく刻まれます。
しかし、運動後や種々の疾患時は、呼吸数・深さ・リズムなどに変化が生じます。

呼吸数の増加は、急変(急激に状態が悪くなる)の予兆、合併症の早期発見に重要な身体所見と言われ、呼吸の観察はとても重要です。

ちなみに、脳への酸素供給が途絶えると数秒で意識消失がおこり、3~5分以上で脳に障害が起こります。
(参考:日本救急医学会)

初期評価時の呼吸評価

現場では緊急・重症度を迅速に判断するため、
初期評価(気道・呼吸・脈拍・意識)をします。

その際、呼吸の評価は
呼吸の有無、速さ、深さ を迅速に確認する。

初期評価の方法は

その後、初期評価(気道、呼吸、脈拍、意識)の結果を総合的に判断し
優先度の高い処置やバイタルを測定します。

呼吸を観察する注意点

呼吸の観察時は、傷病者に意識させずリラックスした状態で観察します。
なぜなら、他のバイタルと違い、本人の意思で容易に調整が可能(随意)です。
(意識レベルもある程度自分の意思で可能ですが割愛)

例えば、「息を止めてください。」と言われたら数秒程度ならできますし、
「ゆ~くり息を吸って、吐いてください。」と言われてもできますよね?

そのため、可能な限り傷病者に意識させないように他のバイタルを測定している最中や、傷病者の目線外から胸部や腹部の動きを見て観察を実施します。

呼吸の観察&評価方法

呼吸の有無

使用資機材:なし

初めに気道が開通しているかを観察します。

意識があり、声を出せる場合は気道が開通していると判断できます。
意識障害のある傷病者では、舌根沈下などにより気道が閉塞している場合があるため
用手的気道確保を実施した後に呼吸を観察してください。

用手的気道確保手技記事作成予定

観察方法は、

  • 視覚:見て
  • 聴覚:聞いて
  • 触覚:感じる

傷病者の鼻や口に頬部を近づけ、
胸郭の動きを目で見ながら呼吸音を耳で聞き、呼気の流れを頬の皮膚で感じる。

以上3つの観察を同時に行い、いずれも認められないときには呼吸停止と判断する。

呼吸数&深さ

使用資機材:なし

呼吸数は「吸って→吐いて」を1回とし、深さ(換気量)は浅い深い(増減)を
10秒 or 15秒観察で実施します。

例)1分は60秒であるため
 10秒観察で2回/分あれば 2回×6=12回/分
 15秒観察で4回/分あれば 4回×4=16回/分

正常な呼吸数の速さを普段から感覚的に掴んでおくと、ほぼ誤差がなく呼吸を評価することができます。

ただし、

深い呼吸をしている場合、
観察し慣れていないと、呼吸が早く感じてしまい、呼吸数を多く判断してしまう場合があるので注意してください。

そのため、色々な呼吸を観察して慣れるまではしっかりと計測してください。

呼吸の性状・リズム

使用資機材:なし

呼吸のリズムや性状に異変がないかを確認します。

正常な呼吸をしている場合、

  • 吸気 < 呼気
  • リズムは一定

となりますが、何かしらの疾患や病態があると
これらは破綻し、異常な呼吸を呈します。

異常呼吸のパターンと考えられる疾患・病態 別記事作成予定

呼吸の型(腹式呼吸と胸式呼吸)

呼吸運動を担う筋を呼吸筋といいます。

主な呼吸筋は横隔膜と肋間筋群で、安静時の吸気量は70%が横隔膜の機能によるものです。
しかし、努力呼吸や換気量の増大時には頸部や胸郭の筋肉(呼吸補助筋と称する)も関与します。

それぞれ、使用する呼吸筋によって腹式呼吸と胸式呼吸に分類されます。

  • 横隔膜 ⇒ 腹式呼吸
  • 肋間筋 ⇒ 胸式呼吸

普通は両者が混在していますが、年齢や病態により変化するのでしっかりと観察する必要があります。

腹式呼吸

横隔膜の伸縮によって行う呼吸を腹式呼吸と言います。

胸膜腔の底の横隔膜が収縮すると、胸膜腔の容積が増えます。この空間は密閉されていますので、胸膜腔の圧力は大気に比べて低く(陰圧に)なります。その結果、肺は受動的に膨らみ、それに伴って大気が入り込んできます。これが吸息です。

次に、先ほどまで伸ばしていた横隔膜が弛緩すると、胸膜腔の容積は小さくなります。肺にかかる圧力が上がるため肺は押しつぶされ、その結果、大気が押し出されます。これが呼息です。

胸式呼吸

肋間筋の働きによって行う呼吸を胸式呼吸と言います。

胸式呼吸で肺の伸縮に係わっているのは肋間筋です。外肋間筋が収縮すると肋骨が上方に上がり、胸郭が前後左右に拡大します。胸腔内は陰圧になり、空気が取り込まれます。これが吸息です。

息を吐く時には逆に、外肋間筋が弛緩して胸郭が収縮し、肺が押しつぶされて空気が押し出されます。これが呼息です

呼吸音:要救急資格

使用資機材:聴診器

聴診器を使用した心音及び呼吸音等の聴取は
救急資格者(救急救命士・救急標準課程)のみ可能

救急資格者のみ可能な処置については
 >>【救急】救急資格者(救急救命士・救急標準課程)による処置一覧

病態によって異常な呼吸音が聞き取りやすい部位は変わりますが
まずは聴診器を使用し、筋肉に覆われておらず、肺までの距離が短いため肺音が聞き取りやすく評価がし易い

  • 両鎖骨下(肺尖部)
  • 両中腋窩線上

を聴診できるようにしましょう。

左右差

左右の中腋下線上を聴診し、左右の呼吸音の差があるか確認します。

健康人では呼吸運動に伴って両側胸郭は左右同時に、かつ均等に動きます。
したがって胸郭運動の非対称性や非同時性は、胸郭または胸腔内異常があることを示しています。

気胸・血胸、胸水等では患側の胸郭運動が小さくなり、呼吸音が減弱するため呼吸音の左右差を
観察することはとても重要です。

副雑音

呼吸音には、正常呼吸音(肺胞呼吸音、気管支肺胞呼吸音)と、
病的な肺から聴取できる異常呼吸音(無気肺や気胸による呼吸音の減弱など)の副雑音(断続性副雑音、連続性副雑音)に分類されます

<肺音の分類>

肺音の分類を示しましたが、まずは正常の呼吸音をわかるようにし
異常な肺音があるかないかを判断できるようにしましょう。

血中酸素飽和度 SpO2:要救急資格

使用資機材:パルスオキシメーター等

先端部を傷病者の指先に挟むことでSpO2(血中酸素飽和度)を測ることができます。

血中に酸素がどれだけ含まれているかを表す指標で、
95%を下回ると呼吸不全が疑われるため注意が必要であり、
酸素投与等の処置を考慮します。

まとめ

今回は基本手技として「バイタルサイン測定:呼吸」を解説しました。
バイタルサインの測定&評価は 救急・医療の現場ではとても重要です。

必要な知識を付けて、確実に実施できるように何度も練習してください。

\まとめ記事/

\バイタル測定基本手技一覧/

以上


それでは明日も頑張りましょう!全ては傷病者のために(^^)/

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最後まで、読んで頂きありがとうございました。

参考資料:救急救命士標準テキスト、救急標準テキスト

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