この記事では、救急現場で行われる活動の1つ
「バイタル測定」の血圧について解説しています。
バイタルサインとは
生命(vital)の兆候(signs)と訳され、人間の生命活動における重要な指標。
呼吸・脈拍・血圧・体温を基本とするが、救急現場では、「意識」を加えて5項目をバイタルサインとする場合が多い。
救急車に乗り始めたばかりの新人救急隊員はもちろん、現役隊員の復習や新人教育で利用できるように、可能な限り救急現場に即して必要十分な情報で纏めました。
この記事を読むことで、
基本手技である血圧測定の目的・重要性・方法やコツ、評価方法が理解でき、自信を持って現場で行えるようになります。
※救急活動の全体の流れ、他のバイタル測定については
↓記事から確認してください。
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- 必要に応じて各公式サイト参考
当サイトは、消防吏員(救急隊員など)向けに運営・執筆しています。
他の医療従事者(医師・看護師など)が病院内で行う行為と一部記述に差異(簡略化など)がある箇所がありますのでご了承ください。
※活動する環境(人数含む)・資格による行える処置・使用できる資機材等のため
それでは、本題に入ります。
共に学びましょう!
初めに:前提や予備知識の確認
血圧の測定方法を確認する前に
- 血圧とはなにか?
- 血圧を測定する重要性
- 血圧計の種類:メリット・デメリット
について、簡単に再確認しておきましょう。
「上記の内容はわかってる」or「すぐに血圧の測定方法を確認したい」という方は↓のボタンから飛べます
①血圧とは:心臓から送り出された血流が血管の内壁を押す力
私たちの体に流れている血液は、生きていく上で欠かせない酸素や栄養素を全身に届ける役割を担っています。心臓がポンプのように収縮と弛緩を繰り返し、血管に圧力をかけることで、動脈を介して全身の組織に規則正しく血液を届けています。
血圧とは、心臓から送り出された血流が血管の内壁を押す力(圧力)を指します。
血圧を決定する主な要因として、
- 心拍出量:心臓が1回の拍動で全身に送り出す血液量
- 循環血液量:身体を循環している血液量
- 弾力性:血管のしなやかさ
- 血管抵抗:血液が血管に流れ込む際の末梢血管の抵抗力
- 血液の粘度
といった5つの要因で変化します。
②血圧を測定する重要性
全身の細胞、組織にどの程度の量の血液が供給されているかを測定することは難しいため
末梢組織の灌流圧の指標として測定します。
血圧値は血液の循環動態を知る手がかりになります。
- 高血圧は、脳卒中や心筋梗塞を引き起こす重要な要因
- 低血圧は、ショックの指標となるため
血圧を測定することは非常に重要です。
③血圧計の種類(手動・電子)とメリットデメリット
血圧計の種類は分類の仕方によって多種多様です。
例えば、
- 加圧方法による分類(手動、自動)
- 測定部位による分類(上腕式、手首式)
- 測定値の確認による分類(アナログ、デジタル)
救急現場で使用する血圧計の分類は
活動の観点から
- アネロイド式血圧計(手動)
- アネロイド式血圧計(半自動)
- 電子血圧計(上腕式)
- 電子血圧計(手首式)
の4つを抑えればよいでしょう。
それぞれのメリット・デメリットを加味し
現場の状況や、傷病者の状態に適した資機材を使い分けましょう。
(以下参考程度に纏めてみました)
種類 | 分類 | 加圧方法 | 減圧方法 | 測定部位 | 測定値の読み取り |
---|---|---|---|---|---|
アネロイド式(手動) | 手動血圧計 | 手動 | 手動 | 上腕 | アナログ(指針を読み取る) |
アネロイド式(半自動) | 電子血圧計 | 手動 | 自動 | 上腕 | デジタル表示 |
上腕式血圧計(全自動) | 電子血圧計 | 自動 | 自動 | 上腕 | デジタル表示 |
手首式血圧計(全自動) | 電子血圧計 | 自動 | 自動 | 手首 | デジタル表示 |
※「アネロイド」とは、ギリシャ語で「液体を使わない」という意味。元々水銀を使用して測定していた血圧計ですが、環境問題の観点から水銀を使用した機器の製造などが原則できなくなりました。水銀(液体)を使わないという意味では、上記全てアネロイド式といえますが、当サイトでは全自動ではない(手動で加圧などが必要な)血圧計を「アネロイド式」と表記しています。
①アネロイド式(手動)血圧計
アネロイド式(手動)血圧計は、聴診器を併用して測定します。
メリット・デメリットは、
②電子血圧計
手首血圧計を救急バックや車内に積載している救急隊は多いかと思います。
手首血圧計は電子血圧計に分類されます。
血圧を自動で測定し、測定値をデジタルで表示します。
電子血圧計のメリット・デメリットは、
③自動電子血圧計
救急車内に備え付けの血圧計です。
当該機器にはECG(モニター心電図)・SpO2等の測定機能も備わっています。
自動電子血圧計のメリット・デメリットは、
血圧を測定するPOINT(注意点)
血圧は様々な要因で変動するため、安静状態での安定した値を測定する必要があります。
そのため
- 外的要因を極力排除し
- 座位or仰臥位で
- 測定部位(上腕動脈など)の高さを心臓の高さに合わせ
- 力ませないように
測定します。
車内収容までの移動や、外的要因(ストレスや寒さ等)で測定値の変動が考えられる場合
また病院までの搬送時間や、病院選定に時間を要する場合等は、
10分~20分程度を目安に継続的に測定する。
血圧の測定手順
血圧の測定方法(手順)は、
アネロイド式血圧計と電子血圧計などで、測定方法が違うため個別に確認しましょう。
アネロイド式血圧計の場合
マンシェットのサイズを確認
マンシェットのサイズは
マンシェットの幅が上腕の約2/3となるサイズを選定します。
成人の場合は、約12~14cmのものを使用する。
マンシェットの幅が
広すぎる⇒収縮期血圧が低く測定され
狭すぎる⇒収縮期血圧が高く測定される
マンシェットを巻く位置
マンシェットの下端と肘窩との間を約2~3cm開け
上腕動脈上にゴム嚢の中央線(ARTERYマークがある場合マークの位置)を合わせマンシェットを巻きます。
上腕動脈の走行は上腕の内側の中央であるため、マンシェットのゴム嚢の中央を上腕のやや内側に合わせることで十分に上腕動脈を緊迫することができる。
傷病者に意識障害があり、かつ1人でマンシェットを巻く場合
傷病者の前腕部を脇に挟み固定しつつ、マンシェットを巻くと巻きやすくなります。
マンシェットを巻く強さ
マンシェットの巻く強さは、
使用する資機材によって変わるため要注意。
基本は以下のどちらかに分類されます。
- 圧がかからない程度に密着する
- 指が2本入る程度
マンシェットの巻きが
きつい⇒収縮期血圧が低く測定され
緩い⇒収縮期血圧が高く測定される
各消防学校の救急標準課程では、アネロイド式血圧計を使用し訓練するため
「指が2本入る程度に巻く」と教えられる。
自動電子血圧計などでは隙間を作らず巻くのが正しい機械もありますので、必ず各資機材の説明書を熟読し正しく使用してください。
マンシェットを巻くのは左右どっち?
正常時、血圧の値は左右で差はほとんどありませんが、
一般的に、血圧の測定値は右腕のほうが左腕よりわずかに高くなります。
※右の腕につながっている動脈血管(右腕頭動脈)のほうが、心臓に近い大動脈から出ているため
血圧の定義から考えると可能であれば右上腕で測定した方がより正確に測ることができると言われています。
しかし、その差は僅かであるため、救急現場では基本的に左右どちらで測っても問題ありません。
ただし、禁忌については注意が必要です。
- シャント造設している傷病者のシャント側
⇒閉塞・狭窄・出血などを誘発する可能性 - 麻痺がある傷病者の麻痺側
⇒末梢の循環が悪く静脈血・組織液がうっ滞しやすい状況
また、大動脈解離など血圧の左右差が指標となることもあるため
必要に応じて両側測定することも考慮してください。
カフで上腕部を圧迫して動脈を閉塞し、続いてカフを減圧していきます。
すると、動脈が少し開いて血液が流れ出すとき、血管から「トントン」と、心拍に同期した音が聴こえ始めます。
これがコロトコフ音(血管音)です。さらに減圧を続けると、ある時点で音が聴こえなくなります。
電子血圧計では、コロトコフ音は聴診器の代わりに搭載されたマイクロフォンによって検出している。
電子血圧計などの場合
※橈骨動脈や正中皮動脈の触知を確認し触診法で収縮期血圧を確認することができます
番外編 血圧の推測(救急資格がなくてもOK)
何かしらの原因で、血圧計で測定できない場合
橈骨動脈、大腿動脈、頸動脈が触知可能かどうかで
簡易的に血圧(収縮期血圧のみ)を推測することが可能です
- 橈骨動脈触知可能 ⇒ 80mmHg以上
- 大腿動脈触知可能 ⇒ 70mmHg以上
- 頸動脈触知可能 ⇒ 60mmHg以上
血圧の正常値・異常値は?
正常値
収縮期血圧 | 拡張期血圧 | |
---|---|---|
正常値 | 100~130mmHg | 50~80mmHg |
高血圧 | 140mmHg 以上 | 90mmHg 以上 |
低血圧 | 90mmHg 以下 150mmHg以上の場合60mmHg以上の血圧低下 |
高血圧
血圧が正常よりも高いものを高血圧といいます。
急激な血圧上昇は中枢神経系や循環系に異常をきたし
- 脳出血
- くも膜下出血
- 高血圧脳症
- 急性大動脈解離
などを引き起こします。
低血圧
血圧が正常よりも低いものを低血圧といいます。
なかでも
- 収縮期血圧 90mmHg 以下
- 平時収縮期血圧150mmHg以上の場合に 60mmHg以上の血圧低下
の場合、ショックと呼ばれ 緊急度の高い状態といえます。
血圧が低下した状態で、末梢循環不全とそれに伴う病態
ショック 別記事作成予定
まとめ
今回は基本手技として「バイタルサイン測定:血圧」を解説しました。
バイタルサインの測定&評価は 救急・医療の現場ではとても重要です。
必要な知識を付けて、確実に実施できるように何度も練習してください。
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以上
それでは明日も頑張りましょう!全ては傷病者のために(^^)/
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最後まで、読んで頂きありがとうございました。
参考資料:救急救命士標準テキスト、救急標準テキスト
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